2年2カ月ぶりのニューアルバム『I Love You』を3月10日にリリースしたフジファブリック! そのアルバムのメンバー全員インタビューを最新号=21年4月号増刊に掲載していますが、情報の解禁日の都合により、7曲目に収録の「あなたの知らない僕がいる feat.秦 基博」に関するインタビュー部分のみ未掲載にしていました。山内総一郎(vo&g)が8年前に秦 基博のアルバムレコーディングにギターで参加。それ以来の友人である秦君と今作でコラボすることになった経緯と、その楽曲について、山内君の言葉をお伝えします! 本誌の記事の後半の楽曲解説の流れにそのままはめ込んだイメージでぜひ読んでください!
インタビュー&文=吉川尚宏 撮影=森好弘
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――そして7曲目が「あなたの知らない僕がいる feat.秦 基博」です!
山内 秦君とは随分前からの友達で。彼と出会ったきっかけは、秦君が一度アルバムのレコーディングに僕を呼んでくれたんですよ。
――『Signed POP』(13年1月)ですよね。その中の「ひとなつの経験」で山内君がギターで参加されて、それが初対面だったと。(本誌13年3月号増刊に秦 基博のインタビューを掲載。その中でその経緯について秦君が話してくれています。バックナンバーをチェック!)
山内 そうです。そこからちょくちょく食事に行ったりもして仲良くしていて。で、すでにお話ししましたように、今回女性ボーカルのお二人(3曲目の「赤い果実feat.JUJU」と4曲目の「たりないすくないfeat.幾田りら」)にオファーさせてもらっていたので、同年代の男性ボーカルとコラボするのもおもしろいんじゃないかなという話になって。そこから秦君の顔が不意に浮かんできて、電話をして。「今、アルバムを作っているんやけど、よかったら一緒にやってくれない?」と伝えたら「ぜひやりたい!」と言ってくれて。そこから曲を作り始めた感じですね。
――じゃあ、他のコラボの2曲と同じく、秦君と一緒に歌うことを頭に置いて作ったと?
山内 そうです。今回のコラボの3曲はいずれも参加いただいたみなさんの名前までを含めて一つの曲名なんですよ。「あなたの知らない僕がいる」が曲名ではなくて、「あなたの知らない僕がいる feat.秦 基博」までがそうであると。3曲ともそういう気持ちで作りました。で、秦君とのコラボをイメージする中で、いろんな曲が思い浮かんだんですね。ワイワイとした感じの賑やかな曲だったり、二人で少しユニークに掛け合う曲だったり。でも今回のアルバムは正々堂々と『I Love You』というタイトルを面と向かって掲げたわけだから、素晴らしいシンガーソングライターであり、バラードの王者でもある秦君と同じく面と向かって歌い合えたらものすごくいいんじゃないかなと思えてきて。それでこの曲をピアノで作って秦君に送ったら「めちゃくちゃいい!」と言ってくれて。コラボすることになりました。
――実際に秦君とレコーディングしてみてどうでしたか?
山内 とにかく素晴らしかったですね! JUJUさんもそうですし、幾田さんもそうですけど“私のボーカルを聴いてほしい”とか“僕のボーカルを聴いてくれ”じゃない人たちなんですよね。その曲の世界をしっかりと体に吸収した上で、その曲にマッチした自分の歌を披露する。そしてその曲をさらにいいものに仕上げてくれるというか、そういう懐の深さと心意気を感じて。特に秦君は友達だからこそ、そこがすごくリアルに伝わってきて、本当に“恐れ入りました”という感じでした(笑)。バンドとソロアーティストだったり、音楽性の違いもあったりするわけですけど、同じ器の中に入れたときに、お互いの色もきちんと存在していて、すごくいい曲になったなという手応えがものすごくありますね。しかも、この曲自体が本当に……言葉で説明するのが少し難しくて。きっかけはほんまにライターを家で見つけたんすよ。
――あ、そうなんだ。歌い出しにある“ホコリが被った鞄の中に/何時か貰った白のライター”ですね。
山内 そう。そこからバッと世界が広がって。この曲で表現したかったのは、今まで生きてきて、もしも自分に突然明日が来なくなったときに、自分が選択して歩んできたここまでの人生はほんまに正解だったと言えるのかな?と。何の間違いもなく過ごしてこれたと思えるのか?と自分に問いかけたときに“わからない”という気持ちになったんですよ。すごく強く生きてきたつもりなのに、どうしたらいいのかがわらなくなる自分がいる……。人間の強さや弱さだったり、生きる理由や生まれた理由とかもわからないままきっと僕らは生きていて、その中でいろんな選択を繰り返しつつ、強く生きようとしている自分もいれば、弱さだったり後悔を感じている自分もいる。どれが正解で不正解かなんて決めるのはなかなか難しいわけですけど、だからこそ、その両方を肯定して受け止めたいという想いを込めて作った曲なんですよね。それが自分なんだと。そう信じて前に進もうよと。実は僕はこの曲を泣きながら書き上げたんですよ(苦笑)。いろんな想いが重なって。だからそんな強い想いがこもったこの曲を、同世代の友人である秦君と歌えたことで、救われた気持ちにもなりましたし、秦君のおかげで本当にすごくいい曲になったなと思うので、聴いてくださるみなさんにも何か温かいエネルギーを感じてもらえる曲になってくれたらうれしいです。